Nature ハイライト 構造生物学:暗所で緑化を起こす物質 2010年5月6日 Nature 465, 7294 一部の光合成生物(例えばマツの実生などの裸子植物)は暗所で緑化することが可能で、これはエンドウのような被子植物の芽生えの緑化に光が絶対に必要なのと対照的である。この暗所での緑化に働く酵素が、暗所作動型プロトクロロフィリド(Pchlide)酸化還元酵素(dark-operative protochlorophyllide oxidoreductase;DPOR)で、クロロフィルaの直接の前駆体であるクロロフィリドaを形成するために必要なPchlideのC17=C18二重結合の立体特異的な還元を触媒する。今回、紅色光栄養細菌であるRhodobacter capsulatus由来のDPORの成分であるNBタンパク質の結晶構造が決定された。この構造から、PchlideのC17=C18二重結合の還元機序と考えられる化学反応機構が示唆された。また、DPORはよく知られた窒素固定酵素であるニトロゲナーゼと似ており、窒素固定と暗所でのクロロフィル形成の分子機構の関係が進化的に近いことが考えられる。 2010年5月6日号の Nature ハイライト 脳:神経コーディング 宇宙:銀河の外側について考える 組織工学:筋肉を模倣する 地球:地球の核の磁場強度 細胞:mtDNAの交換 生理:水の味の分子基盤 医学:C型肝炎の新しい治療薬 細胞:酵母のスピードデート 構造生物学:暗所で緑化を起こす物質 目次へ戻る