Nature ハイライト

環境:気候変動との競争

Nature 462, 7276

気候変動の際には、生物種が平均気温の同じ地域に棲み続けようとするなら、生息域を移動させざるを得ない。そのため、種が存続する可能性は、気温をはじめとする気候因子の変化の程度に加えて、変動する気候への種の対応能力にも依存する。生物種に対するこの圧力を組み込むため、次世紀の気候変動を定量化するように設計された、新しい指標が開発された。その値は、一定の気温を維持するのに必要な地表面上での局所速度を表すもので、距離および時間に対する気温勾配(°C/kmおよび°C/年)から導かれる。気候変動は動植物に影響を与えると考えられるので、この指標はそうした影響を和らげるのに地形が担う役割を定量的に表すものだ。IPCCの排出シナリオA1Bでは、この指標の全球平均値は0.42 km/年だが、最小値は山地の森林バイオームでの0.08 km/年、最大値は冠水草原での1.26 km/年である。これによって明らかになった気候変動速度は、生物種の移動速度および保護生息域のサイズに比べて大きい。今回のデータは、一部の生態系では、生息地回廊(コリドー)あるいは新たな保護区域を介して生物種の移住が加速するように支援することが、保全の重要な要因となる可能性を示唆している。

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