Nature ハイライト 細胞:ウイルスによるp53の不活性化 2010年8月26日 Nature 466, 7310 転写因子p53は、ほぼすべてのがんで不活性化されている腫瘍抑制因子であり、またアデノウイルスの複製を抑制する機能ももつ。アデノウイルスタンパク質であるE1B-55kは、p53を標的として分解するが、これはアデノウイルスの複製過程でのp53の不活性化に極めて重要だと考えられている。実際、E1B-55kを欠損する変異型ウイルスは、p53陽性腫瘍に選択的ながんウイルス療法の手段として検証が行われている。今回Soriaたちは、別のアデノウイルスタンパク質であるE4-ORF3が、E1B-55kとは関係なく、p53が標的DNA部位へ接近するのを妨げるクロマチンサイレンシング機構を介して、p53を不活性化しうることを示した。この研究は、アデノウイルス感染におけるp53の不活性化が、これまで考えられていたよりも複雑な過程であり、またこのシステムが十分に解明されれば、真のp53選択的抗腫瘍ウイルス療法が開発される可能性を示唆している。 2010年8月26日号の Nature ハイライト 医学:ALSのリスク遺伝子 細胞:ウイルスによるp53の不活性化 宇宙:早くから存在したブラックホール 宇宙:ペアを作る小惑星 物理:多重エキシトンの限界は3 海洋:海洋生物多様性の調査 生態:カオス的な生態に対処する 脳:記憶におけるSIRT2の役割 細胞:α-N-メチル化酵素 目次へ戻る