Nature ハイライト 気候:メタンによる温暖化の証拠 2007年9月20日 Nature 449, 7160 暁新世/始新世境界温暖極大期(PETM)と呼ばれる、約5,500万年前に起こった全球的温暖化の期間は、温室効果ガス濃度の急激な上昇が原因とされ、その説明として最も可能性が高いのが、メタンハイドレートの解離である。高緯度域で起こった陸上環境からのメタン放出により、温暖化への影響が増強されたのではないかと考えられていたが、これまで湿地からのメタン放出の増大を示す直接的な証拠はなかった。英国南東部のコバム褐炭層(Cobham Lignite)は近年その性質が明らかにされた、PETM期を通して形成された一連の堆積物だが、今回その地球化学的分析からある程度の証拠が得られた。この堆積物には、温暖化の開始期にホパノイドという細菌バイオマーカーの炭素同位体値が減少したことが記録されており、これはメタン細菌の個体数増加と一致する。この状況は、より温暖で湿潤な気候下で湿地帯のメタン産生増加に対する応答である可能性があり、地球温暖化に対する正のフィードバックとして働いたのかもしれない。 2007年9月20日号の Nature ハイライト 進化:ヨーロッパへ向かった人類 量子情報科学:オンチップ量子光学 地球:残っているアルゴン40 気候:メタンによる温暖化の証拠 発生:受精におけるカルシニューリン 細胞:マークのついた幹細胞 細胞:ノッチシグナル伝達が左右する幹細胞の運命 免疫:免疫系内のバランスを保つ 目次へ戻る