Nature ハイライト 動物行動:フェロモンで決まる愛の形 2007年8月30日 Nature 448, 7157 哺乳類で雄と雌の行動に大きな違いが生じる仕組みについて、これまでは性腺ホルモンが脳の発生初期に神経回路を誘導して、雄あるいは雌の特性を誘導あるいは抑制するとする説が有力だった。しかし新しい研究では、雄としての配偶行動をとるか雌としての配偶行動をとるかという性的指向は、発生の際にあらかじめ決まるわけではないことが示唆されている。雌の成体マウスで、フェロモンの感知によって性行動が変化することがわかったのである。この現象で重要なのは鋤鼻(じょび)器官だが、これは鼻と口の間の鋤骨にある補助嗅覚器官で、その機能はわかっていなかった。鋤鼻器官に異常のある雌は雄のような性行動をとることから、雄、雌どちらの脳にも雄性行動、雌性行動のエフェクター回路の両方が存在し、少なくとも雄では、性別に特異的な感覚調節因子によってオン・オフが切り替えられていると考えられる。ヒト成体には機能をもった鋤鼻器官はないと考えられているが、今回の発見によって、ヒトの性特異的行動の研究に新しい道が開けるだろう。 2007年8月30日号の Nature ハイライト 細胞:幹細胞がニッチを作る仕組み 地球:酸素濃度の上昇が遅れた理由 宇宙:星周エンベロープの中をのぞく 気候:植物が気候に及ぼす影響 生態:種の移動性を考慮する 遺伝:マウスのハップマップが完成 動物行動:フェロモンで決まる愛の形 生理:ショウジョウバエはソーダ水の味がわかる 目次へ戻る