Nature ハイライト

微生物学:サルモネラ菌のバランス戦術

Nature 494, 7437

ネズミチフス菌の毒性集団(緑色)と無毒性集団(灰色)。
ネズミチフス菌の毒性集団(緑色)と無毒性集団(灰色)。 | 拡大する

Credit: A. Sturm and W.-D. Hardt

M Ackermannたちは今回、数理的モデル化と実験を組み合わせて、腸内病原菌であるネズミチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhimurium)の遺伝学的には同一な毒性集団と無毒性集団が、毒性の進化的な安定に必要であることを明らかにした。ネズミチフス菌は一種の協力行動によって宿主に炎症を起こし、こうした炎症はこの細菌が競争相手と戦う際に有利に働く。毒性集団は炎症を引き起こし、無毒性集団は、宿主内で炎症に寄与しないのにこれを利用している無毒性変異体の「ディフェクター(defector)」が増殖するのを制限している。これらの知見は、病原体と戦うための、これまで利用されたことのない新たな可能性を明らかにしている。それは、無毒性のディフェクターは裏切り者として働き、毒性株による長期感染から宿主を防御していて、伝播のリスクを最小限に抑えるのに役立つと考えられるからだ。したがって、ディフェクターとして振る舞う株を意図的に投与することは、従来の抗生物質を必要とせずに感染を制御するための新しい戦略になるかもしれない。

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