Nature ハイライト
物理化学:有機化学的性質を明らかにする超高輝度電子線
Nature 496, 7445
現在、凝縮相過程の原子運動の直接観測は、超高速回折法を用いて可能となっている。しかし、多くの重要な化学的相互作用や生物学的相互作用が起こる有機物質となると事情が違ってくる。有機物質は弱い散乱中心を持ち、熱的に不安定であり、熱伝導が悪いため、測定で有用なデータが得られる前に試料自体が劣化してしまうことが多い。だが、最近の技術の飛躍的進歩によって、低繰り返し数で測定可能な超高輝度フェムト秒電子線源が実現した。今回、M Gaoたちはこの電子線源を用いて、有機塩中で起こる光誘起電荷非局在化を伴う分子運動をマッピングできるほど十分に質の高い回折パターンを、遅延時間をおいて記録した。この結果は、化学や生物学で見られる不安定系の複雑かつ動的な構造過程を調べようとする研究に、超高輝度フェムト秒電子線源が有望であることを明らかにしている。
2013年4月18日号の Nature ハイライト
構造生物学:細菌カリウム輸送体の特性
宇宙:明らかになり始めた大質量スターバースト銀河
材料:ひずむと強くなる
物理化学:有機化学的性質を明らかにする超高輝度電子線
環境科学:水フラックスの算定では植物が支配的である
考古学:魚の調理に使われた最古の土器
生態:転換点までの距離を測る
発生:胚でのレチノイン酸の分布