Nature ハイライト
発生:胚でのレチノイン酸の分布
Nature 496, 7445
モルフォゲンは拡散性のシグナル分子であり、細胞にどういう運命を与えるかは、モルフォゲンの濃度によって異なる。レチノイン酸は特殊なモルフォゲンで、ポリペプチドではなく脂溶性低分子である。ほとんどのモルフォゲンは蛍光標識と融合させることでin vivoでの観察が可能だが、ペプチドではないレチノイン酸は直接観察がもっと難しく、胚でどのような空間的分布をしているのかはいまだ不明である。今回、宮脇敦史(理化学研究所)たちは、GEPRAという遺伝学的にコードされたプローブを開発した。これを使えばin vivoでのレチノイン酸濃度の定量的測定が可能となる。ゼブラフィッシュ胚では、前後軸に沿ったレチノイン酸の直線的な濃度勾配があることが示された。これは、1970年にフランシス・クリックが提唱したモルフォゲン動態のソースシンクモデルを裏付けるデータであると考えられる。
2013年4月18日号の Nature ハイライト
構造生物学:細菌カリウム輸送体の特性
宇宙:明らかになり始めた大質量スターバースト銀河
材料:ひずむと強くなる
物理化学:有機化学的性質を明らかにする超高輝度電子線
環境科学:水フラックスの算定では植物が支配的である
考古学:魚の調理に使われた最古の土器
生態:転換点までの距離を測る
発生:胚でのレチノイン酸の分布