Nature ハイライト

医学:胆汁酸の代謝産物が食餌とがんを結びつける

Nature 499, 7456

疫学のデータからは、肥満とがんの間に関連があることが実証されている。今回、肝がんのマウスモデルを使って、高脂肪食がSASP(老化関連分泌表現型)を誘発し、それによって発がんを強く促進することが明らかにされた。SASPは最近見つかった老化表現型で、発がんを促進するさまざまな因子の分泌と関連している。抗生物質投与などの実験によって、高脂肪食が腸内細菌の組成を変化させ、その結果、微生物による胆汁酸代謝の副産物の1つでDNA損傷を引き起こすデオキシコール酸(DCA)の生産量が増えることがわかった。原英二(がん研究所)たちは、DCAがまだ解明されていない他の因子とともに作用して老化を誘導し、肝臓の星細胞に老化関連サイトカインを分泌させると考えている。こうして分泌されたサイトカインが、肝がん発症を促進するように働く。これらの知見は、食物と腸内細菌叢、がんを結びつける複雑な機構を明らかにするもので、新たな治療法を示唆している。

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