Nature ハイライト

生化学:アシルキャリヤータンパク質の構造が明らかに

Nature 505, 7483

脂肪酸やポリケチドの生合成の際に、伸長していくポリマー鎖はアシルキャリヤータンパク質(ACP)によって安定化されるが、この過程は一時的なものであるため、その反応の分子機構を可視化するのは難しい。今回、この問題を回避した2つの研究結果が報告された。A Masoudiたちは、大腸菌(Escherichia coli)由来のACPがリピドA生合成経路のアシルトランスフェラーゼLpxDと結合した複合体について、無傷のアシル-ACP、加水分解されたアシル-ACP、ホロ-ACPという3つの異なった状態のX線結晶構造を明らかにしている。これらの構造についてアラインメントが行われ、触媒反応中にACPで起こるコンホメーション変化が画像化された。C Nguyenたちは、大腸菌由来のACP触媒酵素の1つであるデヒドラターゼFabAの活性部位のヒスチジンに1分子のACPを、架橋プローブを用いて繋留した。この安定化されたACP–FabA複合体の高分解能X線結晶構造を得てから、NMR分光法を用いてACP/FabAの相互作用の動態を調べた。このグループの実験結果は、基質がACPから移動する際の「飛び出しナイフ」モデルを裏付けるものだった。この架橋プローブを使う手法は、代謝経路やシグナル伝達経路のキャリヤータンパク質の結合相手にも使えそうだ。

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