Nature ハイライト
生化学:アシルキャリヤータンパク質の構造が明らかに
Nature 505, 7483
脂肪酸やポリケチドの生合成の際に、伸長していくポリマー鎖はアシルキャリヤータンパク質(ACP)によって安定化されるが、この過程は一時的なものであるため、その反応の分子機構を可視化するのは難しい。今回、この問題を回避した2つの研究結果が報告された。A Masoudiたちは、大腸菌(Escherichia coli)由来のACPがリピドA生合成経路のアシルトランスフェラーゼLpxDと結合した複合体について、無傷のアシル-ACP、加水分解されたアシル-ACP、ホロ-ACPという3つの異なった状態のX線結晶構造を明らかにしている。これらの構造についてアラインメントが行われ、触媒反応中にACPで起こるコンホメーション変化が画像化された。C Nguyenたちは、大腸菌由来のACP触媒酵素の1つであるデヒドラターゼFabAの活性部位のヒスチジンに1分子のACPを、架橋プローブを用いて繋留した。この安定化されたACP–FabA複合体の高分解能X線結晶構造を得てから、NMR分光法を用いてACP/FabAの相互作用の動態を調べた。このグループの実験結果は、基質がACPから移動する際の「飛び出しナイフ」モデルを裏付けるものだった。この架橋プローブを使う手法は、代謝経路やシグナル伝達経路のキャリヤータンパク質の結合相手にも使えそうだ。
2014年1月16日号の Nature ハイライト
神経科学:自閉症と統合失調症に見られる遺伝的変異
細胞生物学:コヒーシンのリングがDNAを囲い込む仕組み
分子生物学:RNAポリメラーゼをDNA修復のためにバックさせる
宇宙:Be型星に見つかったブラックホール伴星
材料科学:ナノ粒子の「糊」でゲルをくっつける
化学:単純なアルケンから生成できるキラル生成物
地球:河川下刻についての事実と仮定
生態学:アマゾン湿地帯は気体二酸化炭素の放出源である
神経科学:新生仔期の神経活動と血管系のつながり
生化学:アシルキャリヤータンパク質の構造が明らかに