Nature ハイライト
Cover Story:方向を見失う:電磁ノイズは渡り鳥のコンパスによる定位飛行能力を破壊する
Nature 509, 7500
多くの渡り鳥が、その方向感覚を地球の磁場に依存しているが、この極めて弱い磁場をどのような仕組みによって検知しているのかは明らかになっていない。2004年の秋から2006年の秋にかけて、夜間に渡りをするヨーロッパコマドリについての観察がオルデンブルク大学構内の木造の小屋で行われ、この鳥が適切な渡りの方角を決められないらしいという予想外の結果が得られた。H Mouritsenたちは、この結果を受けて、何が起こったのかを確かめるための対照実験を行い、振幅変調中波帯の低レベルの電磁ノイズ(約20 kHz~20 MHz)を浴びると、ヨーロッパコマドリは地球磁場を使えなくなることが明らかにされた。このノイズは、家庭用の電気・電子機器から日常的に発生している部類のものである。この電磁ノイズの磁気成分は、世界保健機関(WHO)の現行の指針に採用されている曝露下限値の1000分の1という弱さだが、これが高等脊椎動物の1種で感覚系全体の機能を破壊する能力を持っていたのである。実験に用いた鳥では、2 kHz~5 MHzの周波数帯の電磁ノイズから遮蔽したり、あるいは地方環境でテストしたりすると、地球の磁場に対する定位能力が回復することが分かった。(Letter p.353; N&V p.296)
2014年5月15日号の Nature ハイライト
合成化学:新しい含窒素天然物の合成
神経科学:子育て行動を制御するニューロン群
神経科学:網膜の方向検出
細胞:心臓再生でのc-kitの役割は小さい
宇宙:銀河系の広がった外部フレア円盤に見つかった若いケフェイド
物理化学:遷移金属化合物における3d励起の追跡
気候科学:極方向へ押し出される熱帯低気圧
免疫:細菌 vs 自然免疫系
合成生物学:拡張された遺伝アルファベットを用いる細菌