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気候科学:極方向へ押し出される熱帯低気圧

Nature 509, 7500

勢力を強めながら香港に近づく2013年台風19号「ウサギ」の衛星赤外画像。カテゴリー5にまで成長したこの台風は、フィリピンや台湾、中国本土で甚大な被害をもたらした。
勢力を強めながら香港に近づく2013年台風19号「ウサギ」の衛星赤外画像。カテゴリー5にまで成長したこの台風は、フィリピンや台湾、中国本土で甚大な被害をもたらした。 | 拡大する

Credit: NOAA Cooperative Institute for Meteorological Satellite Studies, University of Wisconsin-Madison

熱帯低気圧の活動の変化を監視しようという試みは、その発生頻度や持続期間、強度などの測定の全球データセットに一貫性がないことで、妨げられている。J Kossinたちは、こうした測定の代わりに、熱帯低気圧が一生のうちで最大の強度に達した緯度という、はるかにロバストな測定結果に着目して、この長年にわたる問題を回避している。その結果、過去30年間に、強さが最大になった領域の位置が10年間当たり約60 kmという速度で着実に極方向に移動していたことが分かった。この移動は、風の鉛直シアと最大可能強度の変化に関連していると思われ、著者たちは地球温暖化に伴って熱帯域の幅が最近広がっていることとこの変化とが関連しているのではないかと考えている。

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