Nature ハイライト
医学:肺疾患の細胞移植治療
Nature 514, 7523
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の受容体の変異は、肺サーファクタントの蓄積によって呼吸不全となる、肺胞蛋白症(PAP)と呼ばれる遺伝性疾患を引き起こす。PAPに対する薬物療法はなく、肺サーファクタントは肺洗浄によって除去するしかない。マウスモデルでは、遺伝子を修正した造血幹細胞の骨髄移植によりPAPが治癒した例があるものの、この手法では骨髄破壊的前処置と免疫抑制が必要であり、その間に感染する恐れがあるため、ヒトで実行可能であるとは証明されていない。今回、B Trapnellたちは、遺伝子を修正したマクロファージをマウス肺に直接、単回移植すると、PAPが正常化することを報告した。遺伝子を修正したマクロファージは少なくとも1年間存続した。このような遺伝子を修正した自己マクロファージの肺内移植では、骨髄破壊と免疫抑制の必要がなく、PAP患者に対して実行可能性がより高い治療法だと考えられる。
2014年10月23日号の Nature ハイライト
遺伝学:4万5000年前の現生人類のゲノム
医学:肺疾患の細胞移植治療
構造生物学:HIV-1ウイルスが免疫を回避する際の構造基盤
宇宙:がか座β星に見つかった系外彗星
ナノテクノロジー:単層二硫化モリブデンの圧電性
無機化学:四酸化イリジウムカチオンにおける9価の酸化状態
発生生物学:Hoxと分節化の早期の結び付き
進化遺伝学:南北アメリカ大陸の結核の歴史
免疫学:リンパ節を膨張させる機構
がん:急性リンパ芽球性白血病の標的治療