Nature ハイライト
Cover Story:融合しないとだめになる:貪食作用と似た機序の軸索融合を介して行われる神経再生
Nature 517, 7533
線虫の1種であるCaenorhabditis elegansでは神経系が損傷を受けた後に、切断された軸索断片に向かって軸索が新たに伸長していく。表紙では、細胞膜に結合した蛍光色素は青で、細胞質は赤紫色で示されている。見やすくするために、断片の位置は若干ずらしてある。M Hilliardたちは、C. elegansの神経系再生に使われる、軸索融合として知られる非常に効率の良い方法について詳しい解析を行った。この方法では切り離された軸索部分が自発的に融合でき、本来の回路が復元される。こうした状況で起こる融合は、切断された軸索部分の崩壊を防止し、必要となるのは損傷を受けた領域をつなぐための再生だけである。著者たちは、このような再生過程に必要とされる分子装置について調べ、この過程は軸索膜のリン脂質の組成変化に加えて、周囲の組織から再伸長中の軸索中への特定の分子の補充が必要であることを見いだした。意外にも、この過程に関わっていることが分かった分子類や機構は、アポトーシスを起こした細胞を貪食細胞が飲み込む際の認識に関わるものとよく似ている。
2015年1月8日号の Nature ハイライト
神経科学:コウモリの脳内コンパス
微生物学:酵母を好む腸内細菌
微生物学:グルタチオンシグナルがリステリア菌の病原性を助長する
天文学:S型星における元素合成
量子物理学:6時間を上回る記録を達成した量子もつれ
気候科学:化石燃料と気候温暖化の間の地域的な選択
感染症:腸内細菌がClostridium difficile耐性をもたらす
がん:化学療法耐性におけるがん幹細胞の役割
生物物理学:酵素は反応で放出される熱によって拡散する