Nature ハイライト
微生物学:酵母を好む腸内細菌
Nature 517, 7533
ヒト腸内微生物相の優占種の1つであるBacteroides thetaiotaomicronは、宿主の糖タンパク質と酵母由来の多糖の両方に由来する複雑なα-マンノース含有糖質を栄養源として利用できることが明らかになった。B. thetaiotaomicronはα-マンナンを代謝する際に、ひとまず大きめのオリゴ糖に切断してから、それをペリプラズム酵素によって脱重合してマンノースを生成するが、H Gilbertたちは今回、この代謝を可能にしている装置をコードする遺伝子座を突き止めた。共培養実験から、α-マンナン異化作用に関する「利己的」モデルが明らかとなった。このモデルは、多糖の異化には腸内微生物相の多数の細菌種が関与していて、そこから利益を得ているという通説とは異なっている。酵母α-マンナンがヒトの食餌に広く含まれる成分となったのはヒトが現代的な食餌内容を獲得した後なので、この研究は、ヒト腸内微生物相でのグリカン分解の進化がヒト進化における食生活の変化をどのように反映しているかを知るための手掛かりとなるだろう。
2015年1月8日号の Nature ハイライト
神経科学:コウモリの脳内コンパス
微生物学:酵母を好む腸内細菌
微生物学:グルタチオンシグナルがリステリア菌の病原性を助長する
天文学:S型星における元素合成
量子物理学:6時間を上回る記録を達成した量子もつれ
気候科学:化石燃料と気候温暖化の間の地域的な選択
感染症:腸内細菌がClostridium difficile耐性をもたらす
がん:化学療法耐性におけるがん幹細胞の役割
生物物理学:酵素は反応で放出される熱によって拡散する