Nature ハイライト
Cover Story:準備万全、対局にゴー:チャンピオン棋士にも勝てる囲碁用コンピュータープログラムがついに登場
Nature 529, 7587
表紙の集積回路では、基板上に埋め込まれたコンピューターチップの1つが碁盤になっていて、その譜面は2015年10月5日に行われた中国のプロ棋士樊麾(Fan Hui)(黒)とコンピュータープログラムAlphaGo(白)との間の歴史的な対局の最終局面を示している。この対局では、マス目の数が19 × 19のフル規格である19路盤を使い、しかも置き石というハンディキャップなしの条件で、コンピュータープログラムがプロ棋士に初めて勝利した。1997年、チェス用コンピューターのディープ・ブルーが、当時の世界チャンピオンだったガルリ・カスパロフとの6番勝負で勝利したことは、人工知能の発展における画期的な出来事と見なされてきた。だが、さらなる難問がまだ残っていた。それが、古代からの遊戯の囲碁である。コンピューターの碁を打つレベルは、数十年にわたる改良にもかかわらず、最強のものでさえ、最近までアマチュア棋士程度だった。こうした状況下で今回登場したのが、グーグル・ディープマインド社(英国)が開発したプログラム、AlphaGoである。このプログラムはディープニューラルネットワークを用いて熟練した棋士の思考を模倣しており、自己対局から学習することで、性能をさらに向上させる。AlphaGoは、他の最強の部類の囲碁プログラムとの対局で99%の勝率を達成しており、現在のヨーロッパチャンピオンである樊麾との5回の対戦でも全勝している。
2016年1月28日号の Nature ハイライト
生物工学:高精度の遺伝子編集
微生物学:細菌感染の際のRNA発現
宇宙物理学:星形成にあった2回目のチャンス
健康科学:プラスチックでできたウエアラブル汗成分バイオセンサー
神経科学:虚血で損なわれるTRPチャネル
幹細胞:HSCのリンパ球系細胞への分化能の維持
免疫学:制御性T細胞のFoxo1調節
免疫学:ウイルスの免疫回避機構
がん:p53がん抑制因子のウイルスによる乗っ取り
構造生物学:E3リガーゼによるユビキチンの移動