Nature ハイライト
ウイルス学:コロナウイルスのスパイクタンパク質の構造
Nature 531, 7592
コロナウイルスは世界中で呼吸器感染症の原因となっており、その多くは軽症だが、重篤な肺炎を起こすこともあり、最近ではSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)の大流行を引き起こしている。コロナウイルスの細胞への侵入は、ウイルスの糖タンパク質であるスパイク三量体を介して起こり、この三量体には受容体結合ドメインや膜融合ドメインが含まれている。今回2つの研究によって、コロナウイルスの融合前のスパイク三量体の高分解能(4.0 Å)の低温電子顕微鏡構造が報告された。D Veeslerたちはマウス肝炎ウイルスの三量体を、A Wardたちは軽度の呼吸器疾患を引き起こすヒトベータコロナウイルスHKU1を用いて研究を行った。構造から、ウイルス融合過程やパラミクソウイルスのFタンパク質との構造類似性について、機構に関する手掛かりが明らかになり、これらの融合タンパク質が遠い共通先祖から進化した可能性が示唆された。
2016年3月3日号の Nature ハイライト
がんゲノミクス:膵臓がんのゲノミクス
がんの代謝:肥満を促す食餌の代謝への影響
微生物学:細菌のT6SS構造
構造生物学:BAM複合体の構造を決定
高エネルギー宇宙物理学:宇宙線の質量組成
化学:電気的に駆動される酸化還元触媒反応
進化生物学:初期の脊椎動物の脳を見直す
再生医療:腸神経系の前駆細胞
がんの代謝:2種類のKras肺がん
ウイルス学:コロナウイルスのスパイクタンパク質の構造
構造生物学:翻訳開始因子2Bの構造