Nature ハイライト
ナノ科学:個々のナノチューブを通る水流
Nature 537, 7619
カーボンナノチューブは、脱塩などへの応用に関心を集めている。これは、カーボンナノチューブを通って動く水の速度が極めて速いためである。しかし、単一のナノチューブの浸透率の明確な測定が難しかったため、その基礎となる水輸送の機構の特性はこれまで十分に評価されてこなかった。L Bocquetたちは今回、単一のナノチューブから周囲の流体中へ水流が噴出する際の流体ダイナミクスを観察することによって、浸透率を正確に測定できることを示している。この結果から、カーボンナノチューブには半径に依存する大きな表面すべりがあるのに対し、窒化ホウ素ナノチューブには表面すべりがないことが明らかになった。これら2つの系の固液界面に原子スケールの微妙な違いがあることがこうした相違の原因と考えられ、ナノ流体工学が、流体力学の連続的描像が物質の原子的性質と出会う最前線であることを示す例となっている。
2016年9月8日号の Nature ハイライト
材料科学:液体の動きを光で操作
創薬:痛みを標的とするデザイナーオピオイド
構造生物学:ニア原子分解能で得られた真核生物Cavチャネルの構造
構造生物学:分岐したスプライシング複合体の構造
構造生物学:タンパク質をまとわせてトラブルを回避するシャペロン
宇宙物理学:オリオン・バー分子雲の観測
ナノ科学:個々のナノチューブを通る水流
進化生物学:指と鰭条の発生に関わるHox遺伝子群
創薬:新しい薬剤が狙い撃つ3つの熱帯病
免疫学:胚中心での酸素制限