Nature ハイライト

Cover Story:古代の移動を記憶するDNA:787例のゲノム塩基配列によって明らかになった初期人類の分散

Nature 538, 7624

今回の研究に参加した、オーストラリア・アボリジニの1人Aubrey Lynch氏。
今回の研究に参加した、オーストラリア・アボリジニの1人Aubrey Lynch氏。 | 拡大する

Credit: Preben Hjort, Magus Film.

今週号では3つの国際共同研究チームが、地理的に異なる多様な集団に属する個人から得られた計787例の高品質ゲノムについて報告している。D Reichたちは、142集団に由来する300人の全ゲノム塩基配列の解析を行い、非アフリカ人はアフリカ人との分岐後に、アフリカ人に比べて変異蓄積速度が加速したと推定されること、またオーストラリア先住民、ニューギニア人、アンダマン諸島人の実質的な祖先は、現生人類の初期の分散に由来せず、他の非アフリカ人と同じ起源を持つと考えられることを明らかにしている。E Willerslevたちは、オーストラリアの先住民であるアボリジニ83人およびニューギニア島の先住民であるパプア高地人25人の全ゲノム塩基配列データを得て、オーストラリア・アボリジニとパプア人は、単一の出アフリカ分散事象の後、7万2000~5万1000年前にユーラシア人集団から分岐したと推定している。一方、L Paganiたちは、世界各地の125の集団に属する483人から得た高カバー率のヒトゲノムデータセットを報告しており、その中には125の集団に由来する379例の新規ゲノムが含まれている。Paganiたちの分析結果は、全ての非アフリカ人集団は、その遺伝的祖先の大部分が最近起こった単一の出アフリカ分散事象に由来するというモデルを裏付けているが、パプア人にはそれ以前の人類の広がりの痕跡が見られることを示している。表紙画はMarkus Kasemaaによる「A genetic improvisation on a world map」。

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