Nature ハイライト
がん:Notchシグナル伝達は腫瘍の増殖を手助けする
Nature 545, 7654
小細胞肺がん(SCLC)は、神経内分泌表現型を持つアグレッシブな腫瘍である。J Sageたちは今回、SCLCのマウスモデルを用い、Notch経路の活性化が神経内分泌細胞の運命を切り替えて、増殖性の低い非神経内分泌細胞を生み出し、腫瘍内に不均一性を生じさせることを明らかにしている。そしてNotchシグナル伝達の活性化した非神経内分泌細胞は、神経内分泌細胞に栄養供給をするようになる。つまり、神経内分泌腫瘍細胞は自身のニッチ環境を作り出して、神経内分泌細胞に作用する因子を産生させ、腫瘍の増殖を促すのである。従って、神経内分泌細胞を標的とした化学療法と非神経内分泌細胞を標的としたNotch阻害剤は、協調して腫瘍発生を低減する。この研究で、肺がんの腫瘍内不均一性の基盤となる機構に新たな手掛かりが得られ、SCLCを対象とする新しい併用療法の可能性が示唆された。
2017年5月18日号の Nature ハイライト
微生物学:グラム陰性細菌における低分子蓄積の規則
心血管疾患:腸のマイクロバイオームは脳での奇形形成を促進する
植物科学:硝酸イオンによる根や地上部へのシグナル伝達
構造生物学:GPCRの選択的結合の仕組みを解読
原子物理学:量子チップ上の相関を定量化する
生物物理学:細胞移動の流れのソースとシンク
地球科学:地震の推進力
神経科学:ゼブラフィッシュの脳地図作成
神経科学:軸索に対するネトリン1の影響を再考する
がん:Notchシグナル伝達は腫瘍の増殖を手助けする