Nature ハイライト

幹細胞:幹細胞発生の抑制因子

Nature 548, 7666

Mek1/2とGsk3βの阻害剤は、着床前胚の内部細胞塊に非常によく似た、基底状態の多能性を持つマウス胚性幹(mES)細胞の樹立を亢進させる。しかし、こうした条件下での長期培養がmES細胞の発生能へ及ぼす影響についてはよく分かっていない。K Hochedlingerたちは今回、こうした培養条件が、mES細胞のエピジェネティック特性、ゲノム安定性およびin vivo発生能に有害な変化を引き起こすことを示している。彼らは、Mek阻害剤が、観察された異常と関連するDNAメチルトランスフェラーゼの発現を変化させることを見いだし、代わりにSrc阻害剤を用いると、これらの異常は起こらず、mES細胞のゲノム完全性と発生能が保たれることを見いだした。また、別の論文では山田泰広(京都大学)たちが、このような培養条件下で雌のmES細胞を樹立すると、DNAメチル化やゲノムインプリンティングの消失が引き起こされ、分化後も回復しないことを示している。このようなmES細胞は胚や胎盤への発生能が損なわれていることも分かった。山田たちの研究チームはさらに、雌ES細胞のゲノム特性を保持する培地の開発も行っている。

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