Nature ハイライト
構造生物学:タンパク質の自己集合が止まらなくなる「ホットスポット」
Nature 548, 7666
タンパク質の自己集合による対称的な複合体の形成は、非常に多くの生物過程で機能を発揮しているが、こうした複合体によってタンパク質が有害な微細繊維を形成しやすくなる場合もある。E Levyたちは今回、大腸菌(Escherichia coli)が持つ12種類の構造が対称なタンパク質複合体に着目し、「くっつきやすい」(疎水性)アミノ酸1個を変異によって導入するだけで、そのタンパク質本来の折りたたみや構造には影響することなく、高次の集合体の形成を誘発できることを明らかにしている。彼らはさらに、タンパク質データベースでこのような粘着力のある境界を形成しやすい「ホットスポット」を見つけ出し、このようなホットスポットが進化の過程で親水性残基で取り囲まれるようになり、高次の凝集体の形成が抑えられてきたことを示している。これらの知見は、疾患の原因となる変異やタンパク質の進化の研究に関わってくる。また、制御された点変異導入は、生体材料を設計する際に一考する価値がありそうだ。
2017年8月10日号の Nature ハイライト
進化学:類人猿の祖先の進化
神経科学:連合記憶系の配線図
光学:例外点の例外的な光学特性
環境科学:生態系の干ばつからの回復
生態学:高次相互作用が種の多様性を維持する
人類学:青銅器時代のヨーロッパ人の遺伝的祖先
幹細胞:幹細胞発生の抑制因子
がん:がんにおける不活性型の変異型BRAF
構造生物学:タンパク質の自己集合が止まらなくなる「ホットスポット」