Nature ハイライト
化学:自然界に備わる道具箱に加わった付加環化
Nature 549, 7673
2つの断片が結合して環状分子を形成するペリ環状反応は、化学合成では一般的であるが、自然界ではめったに起こらない。シクロヘキセンを形成するディールス・アルドラーゼと呼ばれる酵素が数例発見されているが、生合成における逆電子要請型ディールス・アルダー反応はまだ知られていない。こうした反応は、付加環化段階でヘテロ原子(非炭素原子)が関与することが多いため、ヘテロ環生成物と天然物のいずれの合成においても重要である。今回、ヘテロ・ディールス・アルダー反応を含めて数種のペリ環状反応を触媒できるS-アデノシル-L-メチオニン(SAM)依存性多機能酵素LepIが報告されている。細胞毒性を持つレポリンBの生合成は、LepIによって調節される分岐型反応経路、すなわち直接的なヘテロ・ディールス・アルダー反応、間接的なディールス・アルダー反応およびレトロクライゼン転位反応を経て進み、最終的にヘテロ環ピラン生成物が得られる。
2017年9月28日号の Nature ハイライト
神経科学:大脳皮質の配線に見られる時空間的序列
免疫学:行動異常の背景となる脳の小領域
天文学:ブラックホールの周りがすっかりきれいなことが多い理由
物性物理学:これまでで最高のスピン分裂
化学:自然界に備わる道具箱に加わった付加環化
進化学:地球誕生の時期に迫る最古の生命の証拠
遺伝学:親の年齢が新しい変異に影響を及ぼす
神経科学:アルツハイマー病のリスク因子がタウ病変を増悪させる
がん:脳腫瘍への道を阻むもの
がん遺伝学:胚のDNAメチル化プロファイルとがんとのつながり