Nature ハイライト

化学:自然界に備わる道具箱に加わった付加環化

Nature 549, 7673

2つの断片が結合して環状分子を形成するペリ環状反応は、化学合成では一般的であるが、自然界ではめったに起こらない。シクロヘキセンを形成するディールス・アルドラーゼと呼ばれる酵素が数例発見されているが、生合成における逆電子要請型ディールス・アルダー反応はまだ知られていない。こうした反応は、付加環化段階でヘテロ原子(非炭素原子)が関与することが多いため、ヘテロ環生成物と天然物のいずれの合成においても重要である。今回、ヘテロ・ディールス・アルダー反応を含めて数種のペリ環状反応を触媒できるS-アデノシル-L-メチオニン(SAM)依存性多機能酵素LepIが報告されている。細胞毒性を持つレポリンBの生合成は、LepIによって調節される分岐型反応経路、すなわち直接的なヘテロ・ディールス・アルダー反応、間接的なディールス・アルダー反応およびレトロクライゼン転位反応を経て進み、最終的にヘテロ環ピラン生成物が得られる。

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