Nature ハイライト
構造生物学:ドーパミンの珍しい結合様式
Nature 555, 7695
D2ドーパミン受容体は、統合失調症の治療に使われる抗精神病薬の主な標的で、うつ病やパーキンソン病の治療標的候補ともなっている。しかし、この受容体群についての分子レベルでの理解はまだ限られたものであり、利用可能な薬剤の多くが他のドーパミン受容体にも活性を示し、その結果、深刻な副作用を引き起こす。今回、B Rothたちは、抗精神病薬リスペリドンと複合体を形成したD2ドーパミン受容体の結晶構造を報告している。この構造から、近縁のD3およびD4ドーパミン受容体で観察されたのとは異なる、リスペリドンの珍しい結合の仕方が明らかになった。D2ドーパミン受容体では、1個のトリプトファン残基で形成される疎水性のパッチが蓋として働いてリスペリドンの出入を調節している。この位置に変異が生じると、薬剤がここに結合してとどまる時間が短くなり、これが、広く使われている抗精神病薬の副作用に関係すると考えられる。今回の研究から、D2ドーパミン受容体に選択的でより安全性の高い抗精神病薬を開発する方法が考えられそうだ。
2018年3月8日号の Nature ハイライト
材料科学:半導体と超伝導体をうまく組み合わせる
遺伝学:ゲノム解析から得られたビーカー文化の手掛かり
神経科学:渇きを知る
ナノスケール材料:分子と2D結晶の積層
地球科学:岩石の再循環を明らかにしたダイヤモンド内部の物質
人間行動学:協力の複雑さ
進化学:鳥類の種の豊富さで見る、山岳地帯の生物多様性
分子生物学:ガのpiRNA生合成経路はハエよりも単純
構造生物学:ドーパミンの珍しい結合様式