Nature ハイライト
構造生物学:新規なアレスチン活性化機構
Nature 557, 7705
アレスチンはGタンパク質共役受容体(GPCR)の重要な結合相手の1つで、受容体のインターナリゼーションやGタンパク質に依存しない経路を介したシグナル伝達を促進する。受容体へのアレスチンの結合は、受容体尾部のリン酸化を必要とすると広く考えられてきた。しかし今回、アレスチン尾部に依存しない触媒的活性化機構を明らかにした研究が2つ報告されている。M von Zastrowたちは、生細胞中ではアレスチンのこの触媒的活性化機構が、GPCR膜貫通コアとの一時的な結合だけによって作動することを報告している。アレスチンは受容体から解離した後も、活性化した挙動を示し続ける。解離後のアレスチンは膜リン脂質やクラスリンとの相互作用によって活性化状態が安定化され、クラスリン被覆を持つ構造に集積する。受容体も同じようにそこに集積するかどうかは、その後にGPCRの尾部によって決定される。一方、R Drorたちの研究では、分子動力学シミュレーションや蛍光分光法による実験から、GPCRのコアと尾部によって引き起こされる多様なアレスチン活性化機構についての構造情報が示されている。これらの知見は、細胞でアレスチンが機能する際の機構に関する我々の理解を広げるもので、また選択的なアレスチンシグナル伝達を解明する際に重要となるだろう。
2018年5月17日号の Nature ハイライト
集団遺伝学:古代ゲノムから明らかになった人類史とヒト肝炎の手掛かり
細胞再プログラム化:ニューロン再プログラム化ツールボックスを拡張
構造生物学:新規なアレスチン活性化機構
細胞生物学:鞭毛内輸送装置の形成過程を解き明かす
天文学:ビッグバンの2億5000万年後に始まった星形成
物性物理学:ファンデルワールス・ヘテロ構造体に圧力をかける
大気科学:オゾン層を破壊する化学物質の復活
計算論的神経科学:近道を探す神経ネットワーク
細胞生物学:停止したリボソームからペプチド鎖を遊離させる