Nature ハイライト
ナノ科学:鏡面散乱による驚異的な気体輸送
Nature 558, 7710
ナノスケールのチャネルや細孔を通る気体の透過は、至る所で見られ、通常は、気体分子が細孔壁でランダムな方向に散乱されると仮定するクヌーセン理論によって記述される。今回A Geimたちは、オングストロームスケールのチャネルを通る気体輸送を測定し、気体分子の散乱がチャネル材料の性質に依存することを明らかにしている。グラフェンや窒化ホウ素でできたチャネルの表面は原子レベルで滑らかであり、衝突分子を鏡のように反射するため、クヌーセン理論で予想されるより数桁速い摩擦のない気体流が生じる。これに対して、壁面が二硫化モリブデンでできたチャネルを通る輸送は、クヌーセン理論によってうまく記述される。この違いは、二硫化モリブデン表面では原子の凹凸が大きく、凹凸の高さが輸送される原子のサイズやド・ブロイ波長と同程度であるため、気体輸送に対してランダムな散乱と予期せぬ量子効果が生じることに起因している。
2018年6月21日号の Nature ハイライト
古生物学:新たな真獣類化石と系統発生から明らかになった有胎盤類と有袋類の分岐
構造生物学:ミトコンドリア上の受容体へのDRP1結合の構造基盤
天文学:ミッシングバリオンの発見
ナノ科学:鏡面散乱による驚異的な気体輸送
ナノスケール材料:二次元ヘテロ界面に挿入されたリチウムの測定
神経科学:睡眠の仕組み
DNA損傷:太陽光を遮蔽して造血幹細胞を守る
幹細胞:大腸の幹細胞ニッチを明らかにする
構造生物学:アセチルCoAカルボキシラーゼのアロステリック調節