Nature ハイライト

分子生物学:細胞のDNA修復における二本鎖切断の削り込み

Nature 560, 7716

細胞は2種類の方法で二本鎖切断を修復できる。1つは相同組換え修復(HDR)で、もう1つは非相同末端結合修復(NHEJ)である。HDRでは、相同修復の鋳型を探せるように、切断末端を削り込んで一本鎖尾部を露出させる必要があるのに対して、NHEJでは、相同性を必要とせずに平滑末端を利用して再連結できる。乳がん感受性遺伝子BRCA1が失われると末端の削り込みが著しく抑えられるため、細胞はHDRを利用できなくなり、そのためPARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)の阻害に感受性になる。このPARP感受性はがんの治療に利用されている。今回、3つの報告が寄せられ、既知の因子53BP1やRIF1の他に、シールディン(shieldin)と呼ばれる複合体が末端の削り込みを阻害することが明らかになった。D Durocherたちは、シールディン1~3とREV7という4種類のタンパク質からなるシールディン複合体が、DNAの修復がNHEJによって行われるよう、DNA末端を保護するエフェクターの役割を担っていることを詳しく示す。T de Langeたちはこの研究をさらに進め、シールディンが別の複合体CSTと相互作用して、ポリメラーゼαの損傷部位への誘導を助け、一本鎖末端を二本鎖に埋め戻す仕組みを説明し、CST、シールディン、53BP1、RIF1が二本鎖切断の末端の削り込みを制御する役割を果たしており、その仕組みはシェルタリン複合体によるテロメア機能の保護機構に似ていると結論付けた。さらにR Chapmanたちは、シールディンとREV7はNHEJには必要だが、DNA鎖間の架橋の修復には不要なことを明らかにし、修復のタイプが異なれば依存する要素も異なる理由を説明した。

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