Nature ハイライト

素粒子物理学:見つからなかった双極子モーメント

Nature 562, 7727

物理学の標準模型に含まれない超大質量の素粒子は、存在しても直接観察するのはおそらく難しいだろう。しかし、そうした粒子が存在すれば、例えば電子の非ゼロの電気双極子モーメントという形で、既知の基本粒子に痕跡が残っているはずである。これまで、電子と電場の相互作用を説明する非ゼロの電気双極子モーメントの存在を裏付けるような実験的証拠はなかった。今回C Pandaたちは、一酸化トリウム分子の電子スピン歳差運動に基づいて電子の電気双極子モーメントに対する新しい実験限界を示している。その結果は以前と同じように否定的なものであったが、今回の研究では測定の感度が以前の研究に比べて1桁向上しており、この成果は、仮想的な新しい基本素粒子の質量範囲が3倍に増大したと言い換えることができる。この質量範囲は現在の大型ハドロン衝突型加速器の到達範囲外であるため、今回の結果は標準模型を超える物理学の将来の探索に役立つ可能性がある。

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