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神経科学:齧歯類における冬眠様状態の誘導

Nature 583, 7814

一部の哺乳類は、深刻な食物不足に直面するとデイリートーパー(数分から数時間)または冬眠(数日から数週間)のどちらかの状態に入ることで能動的に体温を下げてエネルギー消費を減少させ、生存を確実にしている。高橋徹(筑波大学)たちは今回、齧歯類の視床下部において、神経ペプチドQRFPの発現を特徴とする独立したニューロン集団(Qニューロン)を特定した。これらのQニューロンを薬理遺伝学的あるいは光遺伝学的に活性化すると、冬眠に類似した、非常に代謝の低い状態を伴う低体温状態が長期にわたり(48時間以上)誘導された。彼らは、Qニューロンが誘導する低体温と低代謝(QIH)に関わる上流と下流のニューロンを決定し、QIHの際には、Qニューロンでの協調的なグルタミン作動性とGABA作動性神経伝達、および視床下部背内側でのQニューロン投射のシナプス出力が重要であることを示している。さらに著者たちは、ラットにおける興奮性Qニューロンの活性化も、QIH様状態を誘導することを示している。マウスでは採餌不良状態に応答してデイリートーパーが見られるが、ラットでは見られず、どちらの種も冬眠しない。もしもヒトにQニューロンが存在すれば、低代謝状態を誘導する方法の開発につながる扉が開かれるだろうというのは心そそられる仮説であり、医学でも重要な意味を持つ。

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