Nature ハイライト

微生物学:マイコバクテリアATP合成酵素へのベダキリン結合の分子基盤

Nature 589, 7840

抗結核薬ベダキリン(BDQ)は、結核治療の基本薬の1つとなっており、マイコバクテリアのATP合成酵素を標的とする。しかし、この薬に結合したATP合成酵素の完全な構造が得られていないことが、その作用機序を理解する妨げとなっていた。今回J Rubinsteinたちは、アポ酵素およびBDQと結合した酵素のさまざまな回転状態でのクライオ電子顕微鏡構造と結晶構造を報告している。これらの構造から、BDQとの結合が全体的なコンホメーションを大きく変化させて、3つの非等価な結合部位が生じることが明らかになった。3つのうち2つはサブユニットaとサブユニットc間の相互作用によって形成される。これらの構造はATP合成の自己調節機構を示唆しており、この機構は結核菌がエネルギーを温存して潜伏感染を維持する能力に関わっている可能性がある。今回得られた構造はまた、現在進行中の第二世代BDQ誘導体の開発や、新しい結核治療薬の構造に基づく設計に役立つ情報ももたらすだろう。

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