Nature ハイライト
微生物学:マイコバクテリアATP合成酵素へのベダキリン結合の分子基盤
Nature 589, 7840
抗結核薬ベダキリン(BDQ)は、結核治療の基本薬の1つとなっており、マイコバクテリアのATP合成酵素を標的とする。しかし、この薬に結合したATP合成酵素の完全な構造が得られていないことが、その作用機序を理解する妨げとなっていた。今回J Rubinsteinたちは、アポ酵素およびBDQと結合した酵素のさまざまな回転状態でのクライオ電子顕微鏡構造と結晶構造を報告している。これらの構造から、BDQとの結合が全体的なコンホメーションを大きく変化させて、3つの非等価な結合部位が生じることが明らかになった。3つのうち2つはサブユニットaとサブユニットc間の相互作用によって形成される。これらの構造はATP合成の自己調節機構を示唆しており、この機構は結核菌がエネルギーを温存して潜伏感染を維持する能力に関わっている可能性がある。今回得られた構造はまた、現在進行中の第二世代BDQ誘導体の開発や、新しい結核治療薬の構造に基づく設計に役立つ情報ももたらすだろう。
2021年1月7日号の Nature ハイライト
原子物理学:極低温原子を通して2層材料の物理を調べる
情報技術:畳み込みニューラルネットワークの光実装
情報技術:CMOS適合フォトニック・テンソルコア
物性物理学:単一欠陥フォノンの電子顕微鏡画像化
進化学:タンガニーカ湖のシクリッド類の脈動的な放散
疫学:移動ネットワークモデルがCOVID-19の不平等を予測し、活動再開計画に情報をもたらす
神経科学:海馬と橋のネットワークの波が脳の状態を調整する
分子生物学:染色体末端の保護の再検討
コロナウイルス:SARS-CoV-2のコーディング能力
免疫学:肝臓におけるクッパー細胞の空間的分離の調節
微生物学:マイコバクテリアATP合成酵素へのベダキリン結合の分子基盤