Nature ハイライト
微生物遺伝学:腸内細菌ゲノム中の小さな違いが表現型に大きな影響を及ぼす
Nature 568, 7750
今回、腸に関連する微生物群集の高分解能でのゲノム解析を可能にする方法が開発され、ゲノム内の多様性(SGV)の特定が可能になった。E Segalたちは、これらのゲノム多様性を示す領域が、異なる大陸の別個のヒトコホートにわたって保存されており、細菌の適応度と関連することを示している。SGVは、CRISPRに関連した遺伝子や抗生物質産生機能を担う遺伝子に多く見つかり、ハウスキーピング遺伝子には見られなかったことから、微生物の適応に役割を担っていると考えられる。イスラエルの1コホートの解析から、SGVと宿主の疾患リスク因子との間に124の関連が特定され、そのうちの40は独立したオランダのコホートでも再現された。このことから、これらの関連の普遍性が明らかになり、著者たちは、微生物とその宿主の間にあると考えられる機構的つながりについての仮説を立てることができた。例えば、グラム陽性菌のAnaerostipes hadrusにおけるイノシトール異化・酪酸生合成経路の存在は、宿主の体重や代謝性疾患のリスクを大きく低下させることに関連する。以上から、この研究は、マイクロバイオームにおいて微生物の適応と宿主の健康に関連するゲノム多様性の新しい階層を明らかにしており、その解析ツールを提供する。
2019年4月4日号の Nature ハイライト
微生物遺伝学:腸内細菌ゲノム中の小さな違いが表現型に大きな影響を及ぼす
量子物理学:フェルミオンが媒介する力
ナノスケール材料:二次元半導体とのファンデルワールス接触
量子力学:量子移動時間
分光法:近接場光学による原子レベルの分解能
生物多様性:キリマンジャロ山における生物多様性と生態系機能
神経科学:塩欲求のバランスを取る
神経科学:渇きは腸管からの液体オスモル濃度信号によって調節される
生態学:サンゴと広く共生しているアピコンプレクサは進化の過渡期にある
構造生物学:明らかになったアミノ酸輸送体LAT1の構造