Nature ハイライト
Cover Story:複雑な関係:BRISC–SHMT2複合体の構造から明らかになった免疫シグナル伝達におけるビタミンB6の意外な役割
Nature 570, 7760
活性型のセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ2(SHMT2)酵素は、細胞の成長や増殖に不可欠な構成要素を合成する能力によって代謝に重要な役割を果たしている。SHMT2酵素は、活性型ビタミンB6である補因子PLPによって活性化される。一方、不活性型のSHMT2は、脱ユビキチン化酵素複合体であるBRISCとの相互作用を通して、免疫シグナル伝達を調節することが知られている。今回E ZeqirajとR Greenbergたちは、ヒトBRISC–SHMT2複合体の構造を提示し、複合体の集合と免疫シグナル伝達の機能を制御するビタミンB6の意外な役割を明らかにしている。この複合体の構造は、極低温(クライオ)電子顕微鏡を用いて3.8 Åの分解能で得られた。BRISCは、基部(黒色)と2本の腕(青色)を持つU字形の構造を形成している。SHMT2(オレンジ色)は、2本の腕を架橋し、BRISCの活性部位をふさぎ、これが特定の標的に達するまで酵素の活性を抑制する。著者たちは、PLP(散在している白色の薄片)によるSHMT2の代謝物活性化が、SHMT2とBRISCの複合体形成を妨げることを示している。さらに著者たちは、PLPの細胞内レベルが高くなるとBRISC–SHMT2相互作用と炎症シグナル伝達が低下したことから、ビタミンB6の代謝と免疫応答の制御の直接的関連が明らかになったと指摘している。
2019年6月13日号の Nature ハイライト
古代ゲノミクス:シベリア北東部のヒトの集団史
量子物理学:極超音速の凝縮体
化学:単一分子内での電子スピンの制御
タンパク質工学:生体触媒反応の改良
大気化学:同位体データで絞り込まれた対流圏オゾン濃度の変化
古生物学:最初の菌類
古代ゲノミクス:古エスキモーのゲノム
微生物学:休眠による防御
免疫学:炎症性関節疾患の病因における滑膜繊維芽細胞の役割
構造生物学:二本鎖RNAウイルスで明らかになった一巻き型のゲノム編成
構造生物学:ポータルを通ってパッケージングされたHSV-1のDNAを可視化