Nature ハイライト
化学:単一分子内での電子スピンの制御
Nature 570, 7760
分子内の励起子再結合に起因する発光は、励起子が占めるエネルギー準位間で直接的に、あるいはより高いスピン多重度のエネルギー状態を経て間接的に生じ得る。通常、観察される発光は、スピン一重項励起子再結合によるものとスピン三重項励起子再結合によるものが混ざっている。今回Y Kim(理化学研究所ほか)たちは、分子内の電子スピンを操作することによって、単一分子におけるスピン三重項励起子の選択的形成を実現している。電子スピンはバイアス電圧を用いて制御でき、これによって負に帯電した分子からスピン選択的に電子が取り除かれる。この選択的なスピン三重項形成は、ラジカル分子でも起こり得るため、より動作電圧が低い有機発光ダイオードを実現できる可能性がある。
2019年6月13日号の Nature ハイライト
古代ゲノミクス:シベリア北東部のヒトの集団史
量子物理学:極超音速の凝縮体
化学:単一分子内での電子スピンの制御
タンパク質工学:生体触媒反応の改良
大気化学:同位体データで絞り込まれた対流圏オゾン濃度の変化
古生物学:最初の菌類
古代ゲノミクス:古エスキモーのゲノム
微生物学:休眠による防御
免疫学:炎症性関節疾患の病因における滑膜繊維芽細胞の役割
構造生物学:二本鎖RNAウイルスで明らかになった一巻き型のゲノム編成
構造生物学:ポータルを通ってパッケージングされたHSV-1のDNAを可視化