Nature ハイライト
量子物理学:極超音速の凝縮体
Nature 570, 7760
光波干渉法がいくつかの計測目的で非常にうまくいっている一方で、自由落下している原子雲を用いる物質波干渉計もまた、高精度測定において成功を収めている。アトムトロニック回路や物質波導波路では、重力加速度の相殺によって、長い問い合わせ時間(interrogation time)を保証する小型のプラットフォームが得られ、計測応用のための感度が向上する。しかし、そうした回路や導波路が低温原子系を長距離にわたって高速に輸送するならばその量子コヒーレンスは破壊されるのか、という重大な問題は取り組まれていないことが多い。今回W von Klitzingたちは、ボース・アインシュタイン凝縮体を、内部コヒーレンスを保ちながら極超音速で15 cmの距離にわたって輸送する、中性原子加速器リングを示している。リングの形をした導波路中で原子凝縮体の損失のない極超音速輸送が今回実証されたことから、物質波の誘導干渉法のさらなる進展が促されるであろう。
2019年6月13日号の Nature ハイライト
古代ゲノミクス:シベリア北東部のヒトの集団史
量子物理学:極超音速の凝縮体
化学:単一分子内での電子スピンの制御
タンパク質工学:生体触媒反応の改良
大気化学:同位体データで絞り込まれた対流圏オゾン濃度の変化
古生物学:最初の菌類
古代ゲノミクス:古エスキモーのゲノム
微生物学:休眠による防御
免疫学:炎症性関節疾患の病因における滑膜繊維芽細胞の役割
構造生物学:二本鎖RNAウイルスで明らかになった一巻き型のゲノム編成
構造生物学:ポータルを通ってパッケージングされたHSV-1のDNAを可視化