Nature ハイライト

Cover Story:細胞のつながり:初めて培養されたアスガルド類アーキアから得られた真核生物の進化の手掛かり

Nature 577, 7791

海洋研究開発機構の潜水調査船「しんかい6500」。今回の培養は、しんかい6500で採取された、未培養微生物を含む深海堆積物のサンプルを用いて行われた。
海洋研究開発機構の潜水調査船「しんかい6500」。今回の培養は、しんかい6500で採取された、未培養微生物を含む深海堆積物のサンプルを用いて行われた。 | 拡大する

Credit: JAMSTEC

植物から動物まで、複雑な生命体は全て真核生物である。真核生物の細胞は、核膜に覆われた核など、膜で区画化された細胞小器官を特徴としている。しかし、真核生物の起源はまだよく分かっていない。井町寛之(海洋研究開発機構)と延優(産業技術総合研究所)たちは今回、初期の真核細胞を生み出した進化経路の解明に役立つ可能性がある新たな単細胞微生物について報告している。著者たちは、真核生物の祖先に最も近縁と考えられている現生の微生物群であるアスガルド類アーキアの1種の培養と分離に初めて成功した。著者たちは、このアーキアを「Candidatus Prometheoarchaeum syntrophicum」と命名し、細胞の倍加時間が14〜25日と増殖速度が極めて遅く、増殖を維持するには共生微生物が必要であることを見いだした。興味深いことに、この微生物の外表面には、表紙に示すような分岐した突起があることが多い。これらの突起によって通り掛かった細菌が捕らえられ、次にそうした細菌が内部に取り込まれ、その後ミトコンドリアなどの膜に閉じ込められた小器官へと進化して、複雑な生命体への準備が整えられた可能性がある。

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