Nature ハイライト
Cover Story:細胞のつながり:初めて培養されたアスガルド類アーキアから得られた真核生物の進化の手掛かり
Nature 577, 7791
植物から動物まで、複雑な生命体は全て真核生物である。真核生物の細胞は、核膜に覆われた核など、膜で区画化された細胞小器官を特徴としている。しかし、真核生物の起源はまだよく分かっていない。井町寛之(海洋研究開発機構)と延優(産業技術総合研究所)たちは今回、初期の真核細胞を生み出した進化経路の解明に役立つ可能性がある新たな単細胞微生物について報告している。著者たちは、真核生物の祖先に最も近縁と考えられている現生の微生物群であるアスガルド類アーキアの1種の培養と分離に初めて成功した。著者たちは、このアーキアを「Candidatus Prometheoarchaeum syntrophicum」と命名し、細胞の倍加時間が14〜25日と増殖速度が極めて遅く、増殖を維持するには共生微生物が必要であることを見いだした。興味深いことに、この微生物の外表面には、表紙に示すような分岐した突起があることが多い。これらの突起によって通り掛かった細菌が捕らえられ、次にそうした細菌が内部に取り込まれ、その後ミトコンドリアなどの膜に閉じ込められた小器官へと進化して、複雑な生命体への準備が整えられた可能性がある。
2020年1月23日号の Nature ハイライト
原子物理学:自己組織化臨界現象
ナノスケール材料:ゲルマニウムによる半導体キュービットのスケーリング
物性物理学:固体を二次元ファンデルワールスナノ結晶へ変換する
エネルギー科学:リボンかハニカムか
水文学:三角州の正味の増大
神経発生:ヒト海馬発生の分子アトラス
発生生物学:ヒトの胚形成の解明
微生物学:母体の微生物相が新生仔の感染を防ぐ交差反応性IgG抗体を誘導する
がん免疫学:B細胞と三次リンパ組織様構造は免疫療法の奏効性を予測する
がん:がんと発生でEMTと繊維化を結び付ける仕組み
ウイルス学:cOAを標的とする新規な抗CRISPR酵素
分子生物学:クロマチンによる複製起点活性化の調節