Nature ハイライト
ウイルス学:cOAを標的とする新規な抗CRISPR酵素
Nature 577, 7791
細菌とアーキアのIII型CRISPR–Cas系は、ウイルスRNAを感知すると、効果的な免疫に必要なシグナル伝達分子のサイクリックオリゴアデニル酸(cOA)を合成する。今回M Whiteたちは、ウイルスが、cOAを迅速に分解する抗CRISPR(Acr)酵素の新規なファミリーを持つことを報告している。彼らは当初、アーキアのSulfolobus islandicusを使った研究で未知のオープンリーディングフレーム(ORF)を見つけ出し、このORFがウイルス防御機構に対抗する特徴を持ち、Acr酵素に似ていることに気付いた。さらに行われた生化学解析、構造解析によって、この酵素(AcrIII-1)が全く新規な折りたたみ構造を使ってシグナル伝達分子のcA4に特異的に結合し、保存されている活性部位を使ってこれを迅速に分解することが明らかになった。このシグナル伝達分子は細菌とアーキアに広く存在するので、ウイルスの攻撃に対する防御機構に重要な役割を担っていると考えられる。
2020年1月23日号の Nature ハイライト
原子物理学:自己組織化臨界現象
ナノスケール材料:ゲルマニウムによる半導体キュービットのスケーリング
物性物理学:固体を二次元ファンデルワールスナノ結晶へ変換する
エネルギー科学:リボンかハニカムか
水文学:三角州の正味の増大
神経発生:ヒト海馬発生の分子アトラス
発生生物学:ヒトの胚形成の解明
微生物学:母体の微生物相が新生仔の感染を防ぐ交差反応性IgG抗体を誘導する
がん免疫学:B細胞と三次リンパ組織様構造は免疫療法の奏効性を予測する
がん:がんと発生でEMTと繊維化を結び付ける仕組み
ウイルス学:cOAを標的とする新規な抗CRISPR酵素
分子生物学:クロマチンによる複製起点活性化の調節