Nature ハイライト

Cover Story:時間を巻き戻す:網膜細胞の再プログラム化によって可能になった老化に関連した視力障害からの回復

Nature 588, 7836

老化は変性過程であり、組織の機能不全や死につながる。分子レベルでは、エピジェネティックな「ノイズ」の蓄積に起因する遺伝子発現パターンの乱れが、組織の機能低下の機構である可能性が示唆されている。今回D Sinclairたちは、網膜神経節細胞に山中転写因子のうち3つ(OSK;Oct4Sox2Klf4)を発現させると、こうした細胞がより若いエピジェネティック状態へと再プログラム化され、眼の神経細胞の時計の針を逆戻りさせられることを報告している。OSKが、組織の若齢時のDNAメチル化パターンやトランスクリプトームを復元することが明らかになり、こうした復元の結果として、視神経を損傷したマウスでは軸索が再生され、緑内障のマウスモデルや老いたマウスでは視力障害が回復した。今回の結果は、哺乳類組織が、若齢時の情報の記録を保持していて、この情報の一部がDNAメチル化によってコードされていることを示唆している。こうした情報を用いることで、組織の機能を改善できるとともに、もしかすると老化の影響を逆転できるかもしれない。

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