Nature ハイライト
Cover Story:塩のない北極海:堆積物コアが示唆する過去の氷期における淡水で満ちた北極海
Nature 590, 7844
表紙は、アイスランドのヨークルスアゥルロゥン氷河湖とダイヤモンドビーチである。北極海はかつて、その大部分が棚氷で覆われていた時期があったと考えられているが、その明確な証拠を見いだすのは困難である。今回W Geibertたちは、最近の氷期において北極海および隣接するノルディック海の大半が淡水で満たされ、厚い棚氷で覆われていたことを示す結果を報告している。海洋堆積物コアについて、海水に含まれるウランの崩壊によって生成されるトリウム230を分析したところ、北極海とノルディック海から得られたコアの複数の層にトリウム230が見られないことが分かった。著者たちは、これは海水が存在しなかったことを示していると解釈している。彼らは、棚氷が効率よくダムを作り、これによってこうした水塊が大西洋から隔てられ、7万〜6万2000年前と15万〜13万1000年前の2つの期間にこの海域が淡水で満たされたと示唆している。
2021年2月4日号の Nature ハイライト
物性物理学:室温のさびに見られる反強磁性スキルミオン
無機化学:アインスタイニウムに光を当てる
化学合成:コンピューター、次はどの実験をすればいい?
集団遺伝学:古いDNAから推測されるカリブ海地域の集団史
老化:プロスタグランジンの抑制は老齢マウスの認知機能を高める
コロナウイルス:フランスでの検査・追跡戦略の成果は芳しくない
コロナウイルス:COVID-19の死亡率には各国間で異なるパターンと一致するパターンがある
医学研究:細菌感染はマウスモデルで過敏性腸症候群を引き起こす
構造生物学:SAM複合体がタンパク質の組み込みを行う仕組み