Nature ハイライト

進化:藻類の「マット」を破壊する軟体動物

Nature 442, 7099

オドントグリフス(Odontogriphus omalus)は、カナダのカンブリア紀中期のバージェス頁岩で見つかった不思議な化石動物群の中でも人気のあるものの1つで、まるでエアーマットにコーヒーミルの歯がくっついたような姿をしている。そのうえ、この動物は「分類に問題あり」という点でも興味がもたれている。当初見つかった1個の化石は、既知のいかなる動物分類群にも当てはめることができなかったからだ。今回189個の新しい化石標本が調べられ、この動物が、大昔の海底で藻類の「マット」を削り取って食べていた、殻をもたない軟体動物らしいことがわかってきた。この新たな解釈の鍵となったのは、軟体動物に特徴的な歯舌という摂食器官の初期形態がこの化石で見つかったことである。歯舌はヤスリのような固い器官で、岩肌に付いた藻類を削り取って食べるのに使われる。この研究によって、非常に重要な動物分類群の1つがたどったごく初期の進化史について知る新たな機会が得られ、さらにはカンブリア紀の「爆発」以前の多細胞動物の起源にかかわるほかのいくつかの不可解な化石についても、再評価が可能になりそうである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度