Nature ハイライト 進化:協力のための自殺 2008年8月21日 Nature 454, 7207 生物個体間の協力行動は解明が難しく、協力行動をとった当の個体が死んでしまう場合はとりわけ難解である。その例として、毒素や毒性因子を作り出した個体は死んでしまうが、それらを作らない他個体がその恩恵にあずかる種類の微生物が挙げられる。そのような自殺型の協力行動もしくは「協力的自殺」を起こさせる遺伝子は、それを保有する個体群の一部だけで発現する場合にのみ存続可能であることは明らかだ。Ackermannたちは、自殺型協力行動の進化に関するモデルを考案し、その安定性の秘密は、協力行動遺伝子を発現する個体としない個体の分類にあることを示した。発現しない個体は、発現する個体からもたらされる公共の利益を得るほうの道を選んできたのだろう。この系の一例として、病原性のネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)のクローン菌体間にみられる毒性因子の発現の差異が挙げられる。表現型ノイズが2つの集団の分化につながり、2つの集団は協力し合って感染を成立させるのである。 2008年8月21日号の Nature ハイライト 生理:BMP-7と肥満 気候:火星のオゾンの化学 化学:金触媒のサイズ効果 遺伝:シンプルライフの遺伝子 宇宙:銀河のフィラメント構造 進化:協力のための自殺 生態:海底下を支配する古細菌 細胞:大腸菌O157:H7の病原性 感覚:磁気センサーとしても働くクリプトクロム 目次へ戻る