Nature ハイライト 臨床心理:恐怖の記憶を封印するには 2010年1月7日 Nature 463, 7277 ヒトの記憶には、再固定という自然の仕組みがある。再固定の際には、想起したときに得られる新しい情報を古い記憶中に組み込むことができる。再固定を薬理学的に阻害すると、恐怖の再生が阻止されることは、動物モデルで示されているが、こうした操作の多くはヒトに有害な化合物を使用する。今回E Phelpsたちは、薬物を用いることなく恐怖記憶を書き換える非侵襲的な方法を報告している。この方法の土台になっているのは、安全な環境の中で、トラウマになった出来事を想起させる事柄に繰り返し直面させて、トラウマ記憶を「消去」するという、既に確立された方法である。この方法にはある程度の効果があるが、記憶は消されたというより覆われた状態にあり、例えば時間の経過やストレスによって戻ってしまうことがある。新方法の改善点はタイミングにある。つまり、古い恐怖情報を再固定する際に「安全だ」という情報を導入することで、恐怖が再生されなくなる。この研究結果は、心的外傷後ストレス障害や不安障害に、新しい非侵襲的治療法が有効である可能性を示している。 2010年1月7日号の Nature ハイライト 臨床心理:恐怖の記憶を封印するには 宇宙:やはり典型的だった超新星 物理:量子粒子のジグザグ運動 物理:エキゾチックな目標に近づく 工学:摩擦の詳細 気候:あの二酸化炭素はどこに行った? ウイルス学:ゲノムに残ったウイルスの「化石」 神経:神経回路の光スイッチ 目次へ戻る