Nature ハイライト
細胞:角膜に血管が存在しない訳
Nature 443, 7114
体内の組織でその中を血管が通っていないものはわずかしかないが、角膜はその1 つである。血管の存在しない孤立した場所である角膜は、がん、関節炎、アテローム性動脈硬化症、糖尿病などの病的な血管新生によって悪化する疾患のための抗血管新生療法のテストに使われることが多い。角膜を取り囲む組織には血管が非常に多いため、角膜の血管の欠如はとても目立つ。さらに、角膜には強力な血管新生分子VEGF-A(血管内皮増殖因子)が多量に含まれることがわかって、この特徴はもっと注目すべきものとなった。そして今回、可溶性VEGFR-1 として知られるVEGF-A のトラップ分子も角膜に存在し、角膜に血管が存在しないのはこの分子の働きだけによるものであることがわかった。この発見は、薬剤設計の観点から重要となりそうだ。血管がある角膜をもつことが知られている生物は、マナティー、変異マウス、およびPax6 に変異がある無虹彩症の患者の一部などごく少数であるが、これらがすべて角膜の可溶性VEGFR-1 を欠いていることは興味深い。
2006年10月26日号の Nature ハイライト
時事:核犯罪の科学捜査
生態:究極のアウトソーシング
気候:砂が示す海水温の変遷
地球:湿気が増えると電気伝導度が上がる?
発生:四肢は体幹にならう
生態:種の喪失と生産力
細胞:角膜に血管が存在しない訳
医学:関節リウマチのニューモデル