Nature ハイライト

遺伝:ヒト集団内で最近起こった遺伝的変動

Nature 493, 7431

米国立心肺血液研究所(NHLBI)のエキソーム塩基配列解読計画の一環として、欧州系アメリカ人とアフリカ系アメリカ人6,500人以上のエキソームが解読された。今回これらのデータを使って、タンパク質コード領域内の一塩基変異(SNV)のうち約73%、また有害と思われるSNVのうち86%が、過去5000〜1万年以内に生じたものであると推定された。これは進化の歴史から見れば短い期間であり、人口が急激に増加した時期と一致する。有害と推定される変化の約86%がこの同じ時間枠の中で生じており、アフリカ系アメリカ人に比べると欧州系アメリカ人のほうが、必須遺伝子やメンデル型疾患の遺伝子に有害な変異を多く持っている。これらのデータは、最近のヒト集団では変異の起こりうる余地が広がり、それがメンデル型疾患という負担にも影響を与えてきたことを示唆しているが、これは同時に、有益な遺伝的変化をも促進する可能性が高く、今後の世代でそうした有益な変化が選択されていくと考えられる。実用面では、この研究成果は遺伝子マッピング研究の際に疾患の原因となる変異の優先順位をつけるのに役立つだろう。

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