Nature ハイライト 化学:ホモキラリティーを生み出す不斉増幅 2006年6月1日 Nature 441, 7093 分子における右手型と左手型の存在、すなわちキラリティーの問題は、パスツールによる鏡像形の酒石酸結晶の発見以来、化学者の興味をかきたててきた。単一のキラル型の分子の合成は通常、最初からキラルな物質を用いて行われる。しかし、片方のキラル生成物の形成だけが増幅されるようにみえる反応も存在する。最近の説明のほとんどでは、この不斉増幅は自己触媒が関係して起こると考えられている。しかし今週号でまた別の機構が明らかになった。今回の新しい方法は、アミノ酸の固液相平衡挙動に基づくもので、一方のキラル型だけを生じるような強い偏りが、初期の小さな不平衡から生じる。この反応は水溶液中で起こるため、このプロセスによって、左手型分子と右手型分子が同数存在した生物出現以前の世界から、一方のキラル型だけに生体分子が偏っている生命界へと変わった仕組みを説明できるかもしれない。 2006年6月1日号の Nature ハイライト 神経:瞬く間に切り替わる眠りのスイッチ 医学:ダウン症候群 Way:南に向かう理由 化学:ホモキラリティーを生み出す不斉増幅 考古:石器は語る 生態:緑濃き場所 進化:珍しいものが生き残る? 医学:HIVを阻止する 生化学:生体分子の設計図 目次へ戻る