Nature ハイライト
細胞:再プログラム化による染色体再生
Nature 507, 7490
環状染色体は、先天異常、精神障害および成長遅延に関連することの多い染色体の構造異常である。山中伸弥(京都大学ほか)たちは今回、大規模な欠失を伴う環状染色体を含む患者由来の繊維芽細胞から、ヒト誘導多能性幹(iPS)細胞を樹立した。これらの再プログラム化された細胞では、異常な環状染色体が失われており、代償性の片親性ダイソミー機構によって野生型ホモログ(つまり正常な染色体)が複製されていた。従ってiPS細胞には、環状構造と数百メガ塩基にわたるDNA欠失を伴う高度に損傷した染色体を除去するという固有の能力がある。著者たちは、細胞の再プログラム化が、よく知られている機能とは大きく異なる機能を果たせる可能性があり、環状構造を伴う大規模な染色体異常を持つ細胞で、多数の遺伝子にわたる複合的な機能喪失を回復させる「染色体治療」の手段になり得るのではないかと考えている。
2014年3月6日号の Nature ハイライト
地球:カンラン石の変形
医学:インフルエンザウイルスの進化を把握
植物科学:融通の利く硝酸輸送体
宇宙:星の周りで生まれつつある円盤内の化学構造
オプトメカニクス:新しい観点で電波を見る
材料科学:新しい分子準結晶材料
生態学:老齢林の重要性
神経科学:音声言語の処理には左右の脳半球が関わっている
細胞:再プログラム化による染色体再生
細胞:シトルリン化は多能性調節の鍵である
がん:紫外線は黒色腫の転移を誘導する