Nature ハイライト

構造生物学:細菌毒性因子Tcの構造

Nature 508, 7494

ヒトのペスト症の病原菌であるペスト菌(Yersinia pestis)、昆虫の病原菌であるPhotorhabdus luminescensなどの細菌は、一連の毒性因子の作用を介して宿主細胞を標的とする。こうした因子には、大型の三者複合体であるABC型毒素複合体(Tc)などが含まれ、Tcは注射器に似た機構によって標的細胞へ毒素を送り込む。しかし、この機構を駆動する力については、よく分かっていなかった。今回、S RaunserたちはP. luminescens由来のTcAサブユニットと1.7メガダルトンのTc複合体全体の高分解能構造を初めて報告した。明らかになった重要な特徴には、宿主特異性に重要となる受容体結合部位およびノイラミニダーゼ様領域、細胞膜へのTcAチャネルの挿入を駆動するpH誘導性の「エントロピー弾性を持つバネ」、それに標的細胞膜への挿入に備えて折りたたみがほどかれた毒素の全体を保持している膜を貫通した移行チャネルなどが挙げられる。

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