Nature ハイライト
量子物理学:ローレンツ対称性の新しい検証
Nature 517, 7536
絶対方位は、ほとんど全ての測定に対して、測定結果に何ら影響を及ぼさないと考えられている。しかし、物理学の標準模型を越えるいくつかの理論では、この基本的な仮定が全ての場合に成立するわけではないと予言されている。つまり、標準模型の拡張版の中には、ローレンツ対称性の破れを予言しているものもいくつかある。今回、電子に対するローレンツ対称性が、量子情報科学に触発された手法を使って極めて高い精度で検証された。著者たちは、捕捉されたカルシウムイオン中で、電子波束を2つの部分に分割し、0.1秒後に再結合させた。この0.1秒の間に、地球は少し自転するので、波束の2つの部分は異なる空間方位をとると考えられる。ローレンツ対称性が破れるなら、波束の再結合の際に干渉が変化すると考えられる。この意味で、この実験手順は、エーテルの理論が誤っていることを証明した1887年の有名なマイケルソン–モーリーの実験と同種のものである。今回の新しい測定では、従来の測定と比較して精度が100倍改善されており、これによって標準模型の拡張領域におけるローレンツ対称性の検証が進むだろう。
2015年1月29日号の Nature ハイライト
気候科学:地球温暖化が停滞している期間の気候モデル
植物科学:シロイヌナズナでの二次細胞壁合成
分子生物学:CRISPR-Cas9を遺伝子発現の調節に使う
天文学:低温星の年齢測定
量子物理学:ローレンツ対称性の新しい検証
ゲノミクス:ヒトゲノムの大規模塩基配列解読
医学:結核性肉芽腫での血管新生
幹細胞:幹細胞による肺の再生
構造生物学:DNAメチルトランスフェラーゼの自己阻害と活性化