Nature ハイライト

Cover Story:シャングリラを形作る:チベットと雲南省にある「残存」景観はタイムカプセルではなく、現在も形成の途上

Nature 520, 7548

中国雲南省メコン川上流。山岳部は川に削られ深い峡谷を形成しているが、高地には起伏の小さな独特の地形も見られる。
中国雲南省メコン川上流。山岳部は川に削られ深い峡谷を形成しているが、高地には起伏の小さな独特の地形も見られる。 | 拡大する

Credit: Giuditta Fellin

表紙は、中国雲南省の揚子江が初めて大きく湾曲している地点である。この印象的な景観は最大で3 kmに及ぶ高低差が見物であり、高地にある起伏の小さい地形は、揚子江、メコン川とサルウィン川が削りとった峡谷のはるか上方に位置している。このような地形の1つが、ジェームズ・ヒルトンが『失われた地平線』で描いた想像上の理想郷、シャングリラのヒントとなった。一般的には、高地にある起伏の小さい地表、すなわち「残存する景観」は、隆起した古い地形であって、過去のテクトニクス条件や環境条件を保存していると考えられている。R Yangたちは今回、チベット高原南東地域と雲南省の、いわゆる「残存する景観」のデジタル地形解析を用いて、現在の地形進化モデルを検証した。そして、高地にある起伏の小さい地形は、受動的に隆起した古い地表面ではないらしいことが見いだされた。このような地形は河川放水路が再構成されて、一部の河川の水が涸れ、テクトニクス的隆起と釣り合わなくなった結果として、現在の位置で形成されていると、彼らは考えている。

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