Nature ハイライト
植物科学:植物ウイルスに対する新しい防御機構
Nature 520, 7549
植物と植物に感染する病原体ウイルスの間には「軍拡競争」に似た関係が存在する。植物は、主にRNAサイレンシングが関わる機構を通じてウイルスに対処している。ウイルスの方はより病原性を強めて、抑制因子に対抗する。さらに、植物はウイルスのエフェクター分子に応答して免疫を引き起こす耐性タンパク質と、ウイルス感染を制限する自然免疫の両方を使っている。E Fontesたちは今回、植物がウイルスとの戦いに際して配備している、もう1つ別の戦術について報告している。シロイヌナズナ(Arabidopsis)は、ベゴモウイルス感染に応じて、ウイルスの標的に関連する遺伝子の転写を翻訳装置内で阻害し、その結果としてタンパク質合成が全体的に低下することが分かった。ベゴモウイルスは、植物ウイルスの中で最も病原性の高いグループの1つであり、ジャガイモやインゲンマメの黄斑モザイク病のような農作物の重篤な感染病を引き起こす。今回の研究は、ベゴモウイルスの制御に使えると考えられる新規な戦術を示唆している。
2015年4月30日号の Nature ハイライト
神経科学:ショウジョウバエ幼虫の多感覚回路
構造生物学:ヒトリボソームの詳細な構造
宇宙物理学:銀河系の中心部の活動
材料科学:ウエハースケールの半導体薄膜
古気候学:気候のシーソーは北から南へ揺れ動く
生物地球化学:窒素固定は早くから出現
植物科学:植物ウイルスに対する新しい防御機構
微生物学:アルテミシニン耐性の発生機序
がん:TP53を間接的な標的にする
免疫学:TLR9によるDNA認識