Nature ハイライト
がん:TP53を間接的な標的にする
Nature 520, 7549
ヒトの腫瘍の大半では、がん抑制遺伝子TP53が変異や欠失によって不活性化されている。これまでのところ、その産物であるp53の活性を回復しようとする試みは、p53シグナル伝達の複雑さのために、ほとんど成功していなかった。今回、TP53を間接的に標的とする新しい方法が報告されている。TP53がゲノムで欠失していると、POLR2Aなど、周辺にある他の遺伝子も欠失していることが多い。POLR2Aはハウスキーピング遺伝子で、RNAポリメラーゼIIの重要なサブユニットをコードしている。今回X Luたちは、POLR2Aが1コピー欠失すると、αアマニチンなどのRNAポリメラーゼII阻害剤に対し、がん細胞の感受性が非常に高くなることを示した。がんのマウスモデルでは、POLR2AとTP53が両方欠失している腫瘍は、がん細胞に対する抗体を結合したαアマニチンの選択的標的となり得る。がん抑制遺伝子に加えて重要なハウスキーピング遺伝子にも影響するゲノム欠失に対して、同様な選択的感受性をうまく利用すれば、さまざまながんに対する選択的治療法への道が開ける可能性がある。
2015年4月30日号の Nature ハイライト
神経科学:ショウジョウバエ幼虫の多感覚回路
構造生物学:ヒトリボソームの詳細な構造
宇宙物理学:銀河系の中心部の活動
材料科学:ウエハースケールの半導体薄膜
古気候学:気候のシーソーは北から南へ揺れ動く
生物地球化学:窒素固定は早くから出現
植物科学:植物ウイルスに対する新しい防御機構
微生物学:アルテミシニン耐性の発生機序
がん:TP53を間接的な標的にする
免疫学:TLR9によるDNA認識